まで出迎え、
「これは孝助殿、さア/\お上《あが》り、今では親子の中何も遠慮はいらない、ズッと上れ」
 と座敷へ通し、
相「さて孝助殿、夜中《やちゅう》のお使《つかい》定めて火急の御用だろう、承りましょう、えゝ何《ど》う云う御用か、何《なん》だ泣いているな、男が泣くくらいではよく/\な訳だろうが、どうしたんだ」
孝「夜中上り恐れ入りますが、不思議の御縁、御当家様の御所望に任せ、主人得心の上|私《わたくし》養子のお取極《とりきめ》はいたしましたが、深い仔細がございまして、どうあっても遠国へ参らんければなりませんゆえ、此の縁談は破談と遊ばして、どうか外々《ほか/\》から御養子をなされて下さいませ」
相「はいナア成程よろしい、お前が気に入らなければ仕方が無いねえ、高は少なし、娘は不束《ふつゝか》なり、舅《しゅうと》は此の通りの粗忽家《そゝッかしや》で一つとして取り所がない、だが娘がお前の忠義を見抜いて煩《わずら》うまでに思い込んだもんだから、殿様にも話し、お前の得心の上取極めた事であるのを、お前一人来て破縁をしてくれろと云ってもそれは出来ないな、殿様が来てお取極めになったのを、お前一人で破る
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