相「何《なん》だ、返事ばかりしていてはいかんよ」
善「只今明けます、只今、へい真暗《まっくら》でさっぱり訳がわからない、只今々々、へい/\、どっちが出口だか忘れた」
 コツリと柱で頭を打《ぶ》ッつけ、アイタアイタヽヽヽと寝惚眼《ねぼけまなこ》をこすりながら戸を開《ひら》いて表へ立出《たちい》で、
善「外の方がよっぽど明るいくらいだ、へい/\どなた様でございます」
孝「飯島の家来孝助でございますが、宜《よろ》しくお取次を願います」
善「御苦労様でございます、只今明けます」
 と石の吊してある門をがッたん/\と明ける。
孝「夜中《やちゅう》上《あが》りまして、おしずまりに成った処《ところ》を御迷惑をかけました」
善「まだ殿様はおしずまりなされぬようで、まだ御本《ごほん》のお声が聞えますくらい、先《ま》ずお這入《はい》り」
 と内へ入れ、善藏は奥へ参り、
善「殿様、只今飯島様の孝助様が入《いら》っしゃいました」
相「それじゃアこれへ、アレ、コリャ善藏寝惚てはいかん、これ蚊帳の釣手を取って向うの方へやって置け、これ馬鹿何を寝惚ているのだ、寝ろ/\、仕方のない奴」
 と呟《つぶや》きながら玄関
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