折から、相川より汝を養子にしたいとの所望《しょもう》に任せ、養子に遣《つか》わし、一人前の侍となして置いて仇《かたき》と名告り討たれんものと心組んだる其の処《ところ》へ、國と源次郎めが密通したを怒《いか》って、二人の命を絶たんとの汝の心底、最前庭にて錆槍を磨《と》ぎし時より暁《さと》りしゆえ、機を外《はず》さず討たれんものと、態《わざ》と源次郎の容《かたち》をして見違えさせ、槍で突かして孝心の無念をこゝに晴《はら》させんと、かくは計らいたる事なり、今汝が錆槍にて脾腹を突かれし苦痛より、先の日汝が手を合せ、親の敵の討てるよう剣術を教えてくだされと、頼まれた時のせつなさは百倍|増《まし》であったるぞ、定めて敵を討ちたいだろうが、我が首を切る時は忽《たちま》ち主殺しの罪に落ちん、されば我|髷《まげ》をば切取って、之《これ》にて胸をば晴し、其の方は一先《ひとまず》こゝを立退《たちの》いて、相川新五兵衞方へ行《ゆ》き密々《みつ/\》に万事相談致せ、此の刀は先《さき》つ頃藤村屋新兵衞方にて買わんと思い、見ているうちに喧嘩となり、汝の父を討ったる刀、中身は天正助定なれば、是を汝に形見として遣《つか》
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