わすぞ、又此の包《つゝみ》の中《うち》には金子百両と悉《くわ》しく跡方《あとかた》の事の頼み状、これを披《ひら》いて読下《よみくだ》せば、我が屋敷の始末のあらましは分る筈、汝いつまでも名残《なごり》を惜しみて此所《こゝ》にいる時は、汝は主殺《しゅうころし》の罪に落るのみならず、飯島の家は改易となるは当然《あたりまえ》、此の道理を聞分けて疾《と》く参れ」
孝「殿様、どんな事がございましょうとも此の場は退《の》きません、仮令《たとえ》親父《おやじ》をお殺しなさりょうが、それは親父が悪いから、かくまで情《なさけ》ある御主人を見捨てゝ他《わき》へ立退《たちの》けましょうか、忠義の道を欠く時は矢張《やはり》孝行は立たない道理、一旦主人と頼みしお方を、粗相《そそう》とは云いながら槍先にかけたは私《わたくし》の過《あやま》り、お詫《わび》の為に此の場にて切腹いたして相果てます」
飯「馬鹿な事を申すな、手前に切腹させる位なら飯島はかくまで心痛はいたさぬわ、左様な事を申さず早く往《ゆ》け、もし此の事が人の耳に入《い》りなば飯島の家に係わる大事、悉《くわ》しい事は書置《かきおき》に有るから早く行《ゆ》かぬ
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