、親の敵《かたき》を討ちたいと、若年の頃より武家奉公を心掛け、漸々《よう/\》の思いで当家へ奉公|住《ずみ》をしたから、どうか敵の討てるよう剣術を教えて下さいと手前の物語りをした時、恟《びっく》りしたというは、拙者がまだ平太郎と申し部屋住の折《おり》、彼《か》の孝藏と聊《いさゝか》の口論がもとゝなり、切捨てたるはかく云う飯島平左衞門であるぞ」
 と云われて孝助は唯《たゞ》へい/\とばかりに呆れ果て、張詰めた気もひょろぬけて腰が抜け、ペタ/\と尻もちを突き、呆気に取られて、飯島の顔を打眺《うちなが》め、茫然として居りましたが、暫《しばら》くして、
孝「殿様そう云う訳なれば、なぜ其の時にそう云っては下さいません、お情のうございます」
飯「現在親の敵と知らず、主人に取って忠義を尽す汝の志、殊《こと》に孝心深きに愛《め》で、不便《ふびん》なものと心得、いつか敵と名告《なの》って汝に討たれたいと、さま/″\に心痛いたしたなれど、苟《かりそ》めにも一旦主人とした者に刃向《はむか》えば主殺《しゅうごろ》しの罪は遁《のが》れ難し、されば如何《いか》にもして汝をば罪に落さず、敵と名告り討たれたいと思いし
前へ 次へ
全308ページ中162ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング