と夫婦|差向《さしむか》いで互《たがい》に打解《うちと》け酌交《くみかわ》し、最《も》う今に八ツになる頃だからというので、女房は戸棚へ這入《はい》り、伴藏一人酒を飲んで待っているうちに、八ツの鐘が忍ヶ岡に響いて聞えますと、一|際《きわ》世間がしんと致し、水の流れも止り、草木も眠るというくらいで、壁にすだく蟋蟀《こおろぎ》の声も幽《かす》かに哀《あわれ》を催《もよ》おし、物凄く、清水の元からいつもの通り駒下駄の音高くカランコロン/\と聞えましたから、伴藏は来たなと思うと身の毛もぞっと縮まる程怖ろしく、かたまって、様子を窺《うかゞ》っていると、生垣《いけがき》の元へ見えたかと思うと、いつの間にやら縁側の所へ来て、
「伴藏さん/\」
 と云われると、伴藏は口が利けない、漸々《よう/\》の事で、
「へい/\」
 と云うと、
米「毎晩|上《あが》りまして御迷惑の事を願い、誠に恐れ入りまするが、未《ま》だ今晩も萩原様の裏窓のお札が剥《はが》れて居りませんから、どうかお剥しなすって下さいまし、お嬢様が萩原様に逢いたいと私《わたくし》をお責め遊ばし、おむずかって誠に困り切りまするから、どうぞ貴方様《あ
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