閨《ねや》淋しいところから早晩《いつか》此のお國にお手がつき、お國は到頭《とうとう》お妾《めかけ》となり済しましたが、奥様のない家《うち》のお妾なればお羽振《はぶり》もずんと宜《よろ》しい。然《しか》るにお嬢様は此のお國を憎く思い、互《たがい》にすれ/\になり、國々と呼び附けますると、お國は又お嬢様に呼捨《よびすて》にされるを厭《いや》に思い、お嬢様の事を悪《あし》ざまに殿様に彼是《かれこれ》と告口《つげくち》をするので、嬢様と國との間|何《な》んとなく落着《おちつ》かず、されば飯島様もこれを面倒な事に思いまして、柳島辺《やなぎしまへん》に或《ある》寮を買い、嬢様にお米《よね》と申す女中を附けて、此の寮に別居させて置きましたが、そも飯島様のあやまりにて、是よりお家《いえ》のわるくなる初めでございました。さて其の年も暮れ、明《あく》れば嬢様は十七歳にお成りあそばしました。こゝに予《かね》て飯島様へお出入《でいり》のお医者に山本志丈《やまもとしじょう》と申す者がございます。此の人一体は古方家《こほうか》ではありますけれど、実はお幇間医者《たいこいしゃ》のお喋《しゃべ》りで、諸人助けのために
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