様には亡くなられ、平太郎様には御家督《ごかとく》を御相続あそばし、御親父様の御名跡《ごみょうせき》をお嗣《つ》ぎ遊ばし、平左衞門と改名され、水道端《すいどうばた》の三宅《みやけ》様と申上げまするお旗下《はたもと》から奥様をお迎えになりまして、程なく御出生《ごしゅっしょう》のお女子《にょし》をお露《つゆ》様と申し上げ、頗《すこぶ》る御器量美《ごきりょうよし》なれば、御両親は掌中《たなぞこ》の璧《たま》と愛《め》で慈《いつく》しみ、後《あと》にお子供が出来ませず、一粒種の事なれば猶《なお》さらに撫育《ひそう》される中《うち》、隙《ひま》ゆく月日《つきひ》に関守《せきもり》なく、今年は早《は》や嬢様は十六の春を迎えられ、お家《いえ》もいよ/\御繁昌《ごはんじょう》でございましたが、盈《み》つれば虧《か》くる世のならい、奥様には不図《ふと》した事が元となり、遂《つい》に帰らぬ旅路に赴《おもむ》かれましたところ、此の奥様のお附《つき》の人に、お國《くに》と申す女中がございまして、器量人並に勝《すぐ》れ、殊《こと》に起居周旋《たちいとりまわし》に如才《じょさい》なければ、殿様にも独寝《ひとりね》の
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