なるのは有難い事だ、家来が殿様のお手に掛って死ぬのは当然《あたりまえ》の事だ、御奉公に来た時から、身体は元より命まで殿様に差上げている気だから、死ぬのは元より覚悟だけれど、是まで殿様の御恩に成った其の御恩を孝助が忘れたと仰しゃった殿様のお言葉、そればかりが冥途《よみじ》の障《さわ》りだ、併《しか》し是も無実の難で致し方がない、後《あと》で其の金を盗んだ奴が出て、あゝ孝助が盗んだのではない、孝助は無実の罪であったという事が分るだろうから、今お手打に成っても構わない、さア殿様スッパリとお願い申します、お手打になさいまし」
 と摩《す》り寄ると、
飯「今は日のあるうち血を見せては穢《けが》れる恐れがあるから、夕景になったら手打にするから、部屋へ参って蟄居《ちっきょ》しておれ、これ源助、孝助を取逃《とりに》がさんように手前に預けたぞ」
源「孝助お詫を願え」
孝「お詫する事はない、お早くお手打を願います」
飯「孝助よく聞け、匹夫《ひっぷ》下郎《げろう》という者は己《おのれ》の悪い事を余所《よそ》にして、主人を怨《うら》み、酷《むご》い分らんと我《が》を張って自《みず》から舌なぞを噛み切り、或《あ
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