云わないか」
と云いながら力に任せて孝助の膝をつねるから、孝助は身にちっとも覚えなき事なれど、証拠があれば云い解く術《すべ》もなく、口惜涙《くやしなみだ》を流し、
孝「痛《いと》うございます、どんなに突かれても抓《つね》られても、覚えのない事は云いようがありません」
國「源助どん、お前から先へ云ってしまいな」
源「孝助云わねえか」
と云いながらドンと突飛《つきと》ばす。
孝「何を突き飛ばすのだね」
源「いつまでも云わずにいちゃア己が迷惑する、云いなよ」
と又突飛ばす。孝助は両方から抓ねられ突飛ばされたりして、残念で堪《たま》らない。
孝「突き飛ばしたって覚えはない、お前もあんまりだ、一つ部屋にいて己の気性も知っているじゃアないか、お庭の掃除をするにも草花一本も折らないように気を附け、釘一本落ちていても直《すぐ》に拾って来て、お前に見せるようにしているじゃアないか、己《おい》らの心も知っていながら、人を盗賊《どろぼう》と疑ぐるとは余《あんま》り酷《ひど》いじゃアないか、そんなにキャア/\いうと殿様までが私《わたくし》を疑ぐります」
始終を聞いていた飯島は大声を上げて、
飯「黙れ孝
前へ
次へ
全308ページ中134ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング