、胴巻の方から文庫の中へ駆込《かけこ》むやつがあるものか、そら/″\しい、そんな優しい顔つきをして本当に怖い人だよ、恩も義理も知らない犬畜生とはお前の事だ、私が殿様にすまない」
と孝助の膝をグッと突く。
孝「何をなさいます、私《わたくし》は覚えはございません、どんな事が有っても覚えはございません/\」
國「源助どん、お前から先へ白状おしよ」
源「孝助、己《おれ》が困る、己が智慧《ちえ》でも付けたようにお疑ぐりがかゝり、困るから早く白状しろよ」
孝「私《わたくし》ゃ覚えはない、そんな無理な事を云ってもいけないよ、外《ほか》の事と違って、大《だい》それた、家来が御主人様のお金を百両取ったなんぞと、そんな覚えはない」
源「覚えがないと計《ばか》り云っても、それじゃア胴巻の出た趣意が立たねえ、己まで御疑念がかゝり困るから、早く白状して殿様の御疑念を晴《はら》してくれろ」
とこづかれて、孝助は泣きながら、只《たゞ》残念でございますと云っていると、お國は先夜《せんや》の意趣を晴《はら》すは此の時なり、今日こそ孝助が殿様にお手打になるか追出《おいだ》されるかと思えば、心地よく、わざと
「孝助どん
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