て、ちやほやいうのだが、いつもと違って欝《ふさ》いでいる故、
飯「お國|大分《だいぶ》すまん顔をしているが、気分でも悪いのか、何《ど》うした」
國「殿様|申訳《もうしわけ》のない事が出来ました、昨晩お留守に盗賊《どろぼう》がはいり、金子が百|目《め》紛失《ふんじつ》いたしました、あのお納戸縮緬の胴巻に入れて置いたのを胴巻ぐるみ紛失いたしました、何《なん》でも昨晩の様子で見ると、台所口の障子が明いたようで、外《ほか》は締りは厳重にしてあって、誰も居りませんから、よく検《あらた》めますと、お居間の地袋の中にあるお文庫の錠前が捻切《ねじき》ってありました、それから驚いて毘沙門《びしゃもん》様に願《がん》がけをしたり、占者《うらないしゃ》に見て貰うと、これは内々《うち/\》の者が取ったに違いないと申しましたから、皆《みんな》の文庫や葛籠《つゞら》を検めようと思って居ります」
飯「そんな事をするには及ばない、内々の者に、百両の金を取る程の器量のある者は一人もいない、他《ほか》から這入《はい》った賊《ぞく》であろう」
國「それでも御門の締りは厳重に付けておりますし、只《たゞ》台所口が明いて居たので
前へ 次へ
全308ページ中128ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング