われて、源助はもとより人が好《い》いからお國に奸策《わるだくみ》あるとは知らず、部屋へ参りて孝助の文庫を持って参ってお國の前へ差出《さしいだ》すと、お國は文庫の蓋《ふた》を明け、中を検《あらた》める振《ふり》をしてそっと彼《か》のお納戸縮緬の胴巻を袂《たもと》から取出《とりだ》して中へズッと差込んで置いて。
國「呆《あき》れたよ、殿様の大事な品がこゝに入っているんだもの、今に殿様がお帰りの上で目張《めっぱ》りこで皆《みんな》の物を検《あらた》めなければ、私のお預《あずか》りの品が失《なく》なったのだから、私が済まないよ、屹度《きっと》詮議《せんぎ》を致します」
源「へい、人は見かけによらないものでございますねえ」
國「此の文庫を見た事を黙っておいでよ」
源「へい宜《よろ》しゅうございます」
と文庫を持って立帰《たちかえ》り、元の棚へ上げて置きました。すると八ツ時、今の三時半頃殿様がお帰りになりましたから、玄関まで皆々《みな/\》お出迎いをいたし、殿様は奥へ通りお褥《しとね》の上にお坐りなされたから、いつもならば出来立てのお供《そな》えのようにお國が側から団扇《うちわ》で扇《あお》ぎ立
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