いても、源助が一人で食べて仕舞って私にはくれません、本当に意地の悪い男だというものだから、殿様もお腹をお立ち遊ばして、源助は年甲斐もない憎い奴だ、今に暇《いとま》を出そうと思っていると仰しゃったよ」
源「へい、これは何《ど》うも、孝助は途方もない事を云ったもので、これは何うも、私《わたくし》は孝助にそんな事をいわれる覚えはございません、おいしい物を沢山に戴いた時は、孝助殿お前は若いから腹が減るだろうと云って、皆《みん》な孝助にやって食べさせる位にしているのに何《なん》たる事でしょう」
國「そればかりじゃアないよ孝助は殿様の物を掠《くす》ねるから、お前孝助と一緒にいると今に掛り合いだよ」
源「へい何か盗《と》りましたか」
國「へいたッて、お前は何も知らないから今に掛り合いになるよ、慥《たし》かに殿様の物を取った事を私は知っているよ、私は先刻《さっき》から女部屋のものまで検《あらた》めている位だから、お前はちょっと孝助の文庫をこゝへ持って来ておくれ」
源「掛り合いに成っては困ります」
國「夫《それ》は私が宜《よ》いように殿様に申上げて置いたから、そっと孝助の文庫を持って来《き》な」
とい
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