お居間の襖をスラリ/\と開けるから、お國はハテナ誰かまだ起きて居るかと思っていると、地袋《じぶくろ》の戸がガタ/\と音がしたかと思うと、錠《じょう》を明ける音がガチ/\と聞えましたから、ハテナと思う内スウーットンと襖をしめ、ピシャリ/\と裾《すそ》を引くような塩梅《あんばい》で台所の方へ出て行《ゆ》きますから、ハテ変な事だと思い、お國は気丈な女でありますから起上り、雪洞《ぼんぼり》を点《つ》け行《い》って見ると、誰もいないから、地袋の方を見ると戸が明け放してあって、お納戸縮緬《なんどちりめん》の胴巻が外の方へ流れ出して居たのに驚いて調べて見ると、殿様のお手文庫の錠前を捻切《ねじき》り、胴巻の中に有った百|目《め》の金子《きんす》が紛失《ふんじつ》いたしたに、さては盗賊《どろぼう》かと思うと後《あと》が怖気立《こわけだ》って憶《おく》するもので、お國も一|時《じ》驚いたが、忽《たちま》ち一計を考え出し、此の胴巻の金子の紛失したるを幸《さいわい》に、之《これ》を証拠として、孝助を盗賊《どろぼう》に落し、殿様にたきつけて、お手打にさせるか暇《ひま》を出すか、どの道かに仕ようと、其の胴巻を袂《
前へ
次へ
全308ページ中123ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング