「米や又今夜も萩原様にお目にかゝらないで帰るのかえ」
 と泣きながらお米に手を引かれてスウーと出て行《ゆ》きました。

        十一

 二十四|日《か》は飯島様はお泊り番で、お國は只《たゞ》寝ても覚めても考えるには、どうがなして宮野邊《みやのべ》の次男源次郎と一つになりたい、就《つ》いては来月の四日に、殿様と源次郎と中川へ釣《つり》に行《ゆ》く約束がある故、源次郎に殿様を川の中へ突落《つきおと》させ、殺してしまえば、源次郎は飯島の家《うち》の養子になるまでの工夫は付いたものゝ、此の密談を孝助に立聞《たちぎ》かれましたから、どうがな工夫をして孝助に暇《いとま》を出すか、殿様のお手打《てうち》にでもさせる工夫はないかと、いろ/\と考え、終《しま》いには疲れてとろ/\仮寝《まどろ》むかと思うと、ふと目が覚めて、と見れば、二|間《けん》隔《へだ》っている襖《ふすま》がスウーとあきます。以前は屋敷|方《がた》にては暑中でも簾障子《すだれしょうじ》はなかったもので、縁側はやはり障子、中は襖で立て切ってありまするのが、サラ/\と開《あ》いたかと思うと、スラリ/\と忍び足で歩いて参り、又次の
前へ 次へ
全308ページ中122ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング