お願い申して誠に恐れ入りますが、未《ま》だ今夜も御札が剥がれて居りませんので這入《はい》る事が出来ず、お嬢様がお憤《むず》かり遊ばし、私《わたくし》が誠に困りますから、どうぞ二人のものを不便《ふびん》と思召《おぼしめ》してあのお札を剥して下さいまし」
 伴藏はガタ/\慄《ふる》えながら、
伴「御尤《ごもっとも》さまでございますけれども、私共《わたくしども》夫婦の者は、萩原様のお蔭様で漸《ようや》く其の日を送っている者でございますから、萩原様のお体《からだ》にもしもの事がございましては、私共夫婦のものが後《あと》で暮し方に困りますから、どうぞ後で暮しに困らないように百両の金を持って来て下さいましたらば直《すぐ》に剥しましょう」
 と云うたびに冷たい汗を流し、やっとの思いで云いきりますと、両人は顔を見合せて、暫《しばら》く首を垂れて考えて居ましたが。
米「お嬢様、それ御覧《ごろう》じませ、此のお方にお恨《うらみ》はないのに御迷惑をかけて済まないではありませんか、萩原様はお心変りが遊ばしたのだから、貴方《あなた》がお慕《した》いなさるのはお冗《むだ》でございます、何《ど》うぞふッつりお諦《あ
前へ 次へ
全308ページ中120ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング