程、こいつは旨《うめ》え、屹度《きっと》持って来るよ、こいつは一番やッつけよう」
と慾というものは怖《おそろ》しいもので、明《あく》る日は日の暮れるのを待っていました。そうこうする内に日も暮れましたれば、女房は私《わたし》ゃ見ないよと云いながら戸棚へ入るという騒ぎで、彼是しているうち夜《よ》も段々と更《ふ》けわたり、もう八ツになると思うから、伴藏は茶碗酒でぐい/\引っかけ、酔った紛《まぎ》れで掛合う積りでいると、其の内八ツの鐘がボーンと不忍《しのばず》の池《いけ》に響いて聞えるに、女房は熱いのに戸棚へ入り、襤褸《ぼろ》を被《かぶ》って小さく成っている。伴藏は蚊帳の中《うち》にしゃに構えて待っているうち、清水のもとからカランコロン/\と駒下駄の音高く、常に変らず牡丹の花の灯籠を提《さ》げて、朦朧《もうろう》として生垣《いけがき》の外まで来たなと思うと、伴藏はぞっと肩から水をかけられる程|怖気立《こわけだ》ち、三合呑んだ酒もむだになってしまい、ぶる/\慄《ふる》えながらいると、蚊帳の側へ来て、伴藏さん/\というから、
伴「へい/\お出《い》でなさいまし」
女「毎晩参りまして、御迷惑の事を
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