が一体にしんと致しましたから、此の時は小声で話をいたしても宜《よ》く聞えるもので、蚊帳の中《うち》で伴藏が、頻りに誰《たれ》かとこそ/\話をしているに、女房は気がつき、行灯《あんどう》の下影《したかげ》から、そっと蚊帳の中《うち》を差覗《さしのぞ》くと、伴藏が起上《おきあが》り、ちゃんと坐り、両手を膝についていて、蚊帳の外には誰《だれ》か来て話をしている様子は、何《なん》だかはっきり分りませんが、何《ど》うも女の声のようだから訝《おか》しい事だと、嫉妬《やきもち》の虫がグッと胸へ込み上げたが、年若とは違い、もう三十五にもなる事ゆえ、表向《おもてむき》に悋気《りんき》もしかねるゆえ、余《あんま》りな人だと思っているうちに、女は帰った様子ゆえ何《なん》とも云わず黙っていたが、翌晩も又来てこそ/\話を致し、斯《こ》ういう事が丁度三晩の間続きましたので、女房ももう我慢が出来ません、ちと鼻が尖《とん》がらかッて来て、鼻息が荒くなりました。
伴「おみね、もう寝ねえな」
みね「あゝ馬鹿々々しいやね、八ツ九ツまで夜延をしてさ」
伴「ぐず/\いわないで早く寝ねえな」
みね「えい、人が寝ないで稼いでいるの
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