を耘《うな》い、庭や表のはき掃除などをし、女房おみねは萩原の宅《たく》へ参り煮焚《にたき》洒《すゝ》ぎ洗濯やお菜《かず》ごしらえお給仕などをしておりますゆえ、萩原も伴藏夫婦には孫店《まごだな》を貸しては置けど、店賃《たなちん》なしで住まわせて、折々《おり/\》は小遣《こづかい》や浴衣《ゆかた》などの古い物を遣《や》り、家来同様使っていました。伴藏は懶惰《なまけ》ものにて内職もせず、おみねは独りで内職をいたし、毎晩八ツ九ツまで夜延《よなべ》をいたしていましたが、或晩《あるばん》の事|絞《しぼ》りだらけの蚊帳《かや》を吊《つ》り、この絞りの蚊帳というは蚊帳に穴が明いているものですから、処々《ところ/″\》観世縒《かんじんより》で括《しば》ってあるので、其の蚊帳を吊り、伴藏は寝※[#「蓙」の左の「人」に代えて「口」、92−4]《ねござ》を敷き、独りで寝ていて、足をばた/\やっており、蚊帳の外では女房が頻《しき》りに夜延をしていますと、八ツの鐘がボンと聞え、世間はしんと致し、折々清水の水音が高く聞え、何《なん》となく物凄《ものすご》く、秋の夜風の草葉にあたり、陰々寂寞《いん/\せきばく》と世間
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