でも見捨てずに可愛《かわい》がってやっておくれ、私《わたし》は直《すぐ》にチョコ/\と隠居して、隅《すみ》の方《ほう》へ引込《ひっこ》んでしまうから、時々少々ずつ小遣《こづかい》をくれゝばいゝ、それから外《ほか》に何もお前に譲る物はないが、藤四郎吉光《とうしろうよしみつ》の脇差《わきざし》が有る、拵《こしら》えは野暮《やぼ》だが、それだけは私の家《うち》に付いた物だからお前に譲る積りだ、出世はお前の器量にある」
飯「そういうと孝助が困るよ、孝助も誠に有難い事だが、少し仔細があって、今年一ぱい私の側で奉公したいと云うのが当人の望《のぞみ》だから、どうか当年一ぱいは私の手元に置いて、来年の二月に婚礼をする事に致したい、尤《もっと》も結納だけは今日致して置きます」
相「へい来年の二月では今月が七月だから、七八九十十一十二|正《しょう》二と今から八ヶ月|間《あいだ》があるが、八ヶ月では質物《しつもつ》でも流れて仕舞うから、余り長いなア」
飯「それは深い訳が有っての事で」
相「成程、あゝ感服だ」
飯「お分りに成りましたか」
相「それだから孝助に娘の惚れるのも尤《もっと》もだ、娘より私が先へ惚れた
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