に就《つ》いても、何《ど》うか首尾よくお國と源次郎をお前に討たせたいものだのう、これから宇都宮へ行《ゆ》けば私がよき手引をして、屹度《きっと》両人を討たせるから」
と互に言葉を誓い孝助は暇《いとま》を告げて急いで水道端へ立帰りました。
相「おや孝助殿、大層早くお帰りだ、いろ/\お買物が有ったろうね」
孝「いえ何も買いません」
相「なんの事だ、何も買わずに来た、そんなら何か用でも出来たかえ」
孝「お父様《とっさま》どうも不思議な事がありました」
相「ハヽ随分世間には不思議な事も有るものでねえ、何か両国の川の上に黒気《こくき》でも立ったのか」
孝「左ようではございませんが、昨日良石和尚が教えて下さいました人相見の所へ参りました」
相「成程行ったかえ、そうかえ、名人だとなア、お前の身の上の判断は旨く当ったかえ/\」
孝「へい、良石和尚が申した通り、私《わたくし》の身の上は剣《つるぎ》の上を渡る様なもので、進むに利あり退くに利《さ》あらずと申しまして、良石和尚の言葉と聊《いさゝ》か違いはござりません」
相「違いませんか、成程智識と同じ事だ、それから、へえそれから何《なん》の事を見て貰ったか」
孝「それから私《わたくし》が本意を遂げられましょうかと聞くと、本意を遂げるは遠からぬうちだが、遁《のが》れ難《がた》い剣難が有ると申しました」
相「へえ剣難が有ると云いましたか、それは極《ごく》心配になる、又昨日のような事があると大変だからねえ、其の剣難は何《ど》うかして遁れるような御祈祷でもしてやると云ったか」
孝「いえ左ような事は申しませんが、貴方《あなた》も御存じの通り私《わたくし》が四歳の時別れました母に逢えましょうか、逢えますまいかと聞くと、白翁堂は逢っていると申しますから、幼年の時に別れたる故、途中で逢っても知れない位だと申しても、何《なん》でも逢っていると申し遂《つい》に争いになりました」
相「ハアそこの所は少し下手糞だ、併《しか》し当るも八卦《はッけ》当らぬも八卦、そう身の上も何もかも当りはしまいが、強情を張ってごまかそうと思ったのだろうが、其所《そこ》の所は下手糞だ、なんとか云ってやりましたか、下手糞とか何とか」
孝「すると後《あと》から一人四十三四の女が参りまして、これも尋ねる者に逢えるか逢えないかと尋ねると、白翁堂は同じく逢っているというものだから、其の女はなに
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