《こと》になりませう。殿「ナニ宜《よろ》しい、心配《しんぱい》をするな、安心して直《すぐ》に此場《このば》で飲《の》め、さア/\今度《こんど》は其方《そのはう》も診《み》てやらう、何歳《なんさい》ぢや。○「エヽ三十七|歳《さい》で。殿「何処《どこ》か悪い処《ところ》でもあるか。○「へい少々《せう/\》下腹《したはら》が痛いやうで。殿「夫《それ》は何《ど》うも往《い》かぬな、併《しか》しさういふのには魔睡剤《ますゐざい》を用《もち》ゆると直《すぐ》に癒《なほ》るて、モルヒネをな、エート一ゲレンは一|厘《りん》六|毛《もう》、一グラムとは一|匁《もんめ》と申《まう》して三|分《ぶ》ゲレンとは三|割《わり》にして硝盃《コツプ》に三十|滴《てき》が半《はん》ゲレンぢやが、見て居《を》れ斯《か》ういふ工合《ぐあい》にするのだ。と硝盃《コツプ》へ先《さき》に水を入《い》れて、ポタリ/\と壜《びん》の口を開《あ》けながら滴《たら》すのだが、中々《なか/\》素人《しろうと》にはさう旨《うま》く出来《でき》ない、二十|滴《てき》と思つた奴《やつ》が六十|滴《てき》許《ばかり》出た。殿「まア宜《よろ》しい、是《これ》で負《まけ》て置《お》かう。此様《こん》なものを負《まけ》られた者《もの》こそ因果《いんぐわ》で、之《これ》を服《のみ》まして御前《ごぜん》を下《さが》ると、サア何《ど》うも大変《たいへん》、当人《たうにん》は酷《ひど》い苦しみやう、其翌日《そのよくじつ》ヘロ/\になつて出て来《き》ました。登「何《ど》うだ、少しは宜《よろ》しいか、木内君《きのうちくん》。木内「イヤ何《ど》うにも斯《か》うにも実《じつ》に華族《くわぞく》のお医者《いしや》抔《など》に係《かゝ》るべきものではない、無闇《むやみ》にアノ小さな柊揆《さいづち》でコツコツ胸を叩《たゝ》いたり何《なん》かして加之《おまけ》に劇《ひど》い薬を飲《の》ましたもんだから、昨夜《ゆうべ》は何《ど》うも七十六|度《たび》厠《かはや》へ通《かよ》つたよ。登「夫《それ》は大変《たいへん》だ、併《しか》し君《きみ》はまだ一|命《めい》があるのが幸福《しあはせ》だ、大原伊丹君抔《おほはらいたみくんなど》は可愛想《かあいそう》にモルヒネを沢山《たくさん》飲《の》ませられたもんぢやから、到頭《たうとう》死んで了《しま》つた。と話をして居《
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