りたく心得《こゝろえ》ますが……。殿「おゝ夫《それ》は宜《よ》からう、コレ伊丹《いたみ》も何《なに》も皆《みな》此所《これ》へ来《こ》い。伊「へい/\。登「上《かみ》が是《これ》だけのお道具《だうぐ》を何日《いつ》の間《ま》にかお集めに成《なつ》たのだ。伊「へえー、是《これ》は何《なん》と申《まう》すもので。殿「ウム、夫《それ》は検熱器《けんねつき》と云《い》ふものだ、是《これ》が聴診器《ちやうしんき》、是《これ》が打診器《だしんき》と云《い》ふものだ。伊「へえー。殿「一つ診《み》てやらうか。登「いえ私《わたくし》は別段《べつだん》何処《どこ》も。殿「いや然《さ》うでない、まア診《み》て遣《つか》はすから裸体《はだか》になれ、是《これ》も稽古《けいこ》じや、何《なん》でも事は度々《たび/\》数《かず》を掛《かけ》んければいかぬからの。登「併《しか》し御前《ごぜん》のお目通《めどほ》りで裸体《はだか》になるは恐入《おそれいり》ますことで。殿「ナニ構《かま》はぬ、許《ゆる》すから宜《よ》い。登「然《しか》らば御免《ごめん》を……エヘヽヽ斯《か》ういふ事に致《いた》しますか。殿「ウム、好《よ》い骨格《こつかく》ぢやな。登「へい、お蔭《かげ》さまで四十五|歳《さい》まで一|度《ど》も煩《わづ》らうたことはござりませぬ。殿「左様《さやう》であらう、ソラ此器《これ》で脈搏《みやくはく》を聴《き》くんだ、何《ど》うだグウ/\鳴《な》るだらう。登「エヘヽヽヽくすぐつたうござりますな、左様《さやう》横《よこ》ツ腹《ぱら》へ器械《きかい》をお当《あて》あそばしましては。殿「いや斯《か》ういふ処《ところ》に病《やまひ》は多くあるものだからな、是《これ》から一つ打診器《だしんき》で肺部《はいぶ》を叩《たゝ》いて見てやらう。登「いや夫《それ》は何《ど》うも危《あぶな》うございます。殿「ナニ心配するな、ソラ斯《か》ういふ塩梅《あんばい》だ、トントン/\トンとナ。登「アヽ痛《いた》うござります。殿「ハヽー少し逆上《ぎやくじやう》して居《ゐ》るやうぢやから、カルメロを一|分《ぶ》三|厘《りん》にヤーラツパを五|分《ふん》調合《てうがふ》して遣《つかは》すから、小屋《こや》へ帰《かへ》つて一|日《にち》に三|囘《くわい》の割合《わりあひ》で服薬《ふくやく》いたすがよい。登「へい、何《ど》うも有難《あ
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