《あ》げるからお喫《た》べ、夫《それ》だけはお見舞《みまひ》かた/″\私《わつし》が御馳走《ごちそう》して上《あ》げるから。源「ハツ/\何《ど》うも御親切《ごしんせつ》に有難《ありがた》う存《ぞん》じます、何卒《どうか》貴方《あなた》お宅《たく》へ帰《かへ》つて下《くだ》さいまし。金「帰《かへ》らんでも宜《い》いからお喫《あが》りな、私《わつし》の見て居《ゐ》る前《めえ》で。源「夫《それ》がいけないので、私《わつし》は子供《こども》の時分《じぶん》から、人の見て居《ゐ》る前《まい》では物は喰《く》はれない性分《しやうぶん》ですから、何卒《どうぞ》帰《かへ》つて下さい、お願ひでございますから。金「あい、ぢやア帰《かへ》るよ、用があつたらお呼びよ、直《すぐ》に来《く》るから。と金兵衛《きんべゑ》は宅《たく》へ帰《かへ》つたが考へた。金「はてな、彼《あ》の坊主《ばうず》は妙《めう》な事を云《い》ふて、人の見て居《ゐ》る前《まい》では物が喰《く》はれないなんて、全体《ぜんたい》アノ坊主《ばうず》は大変《たいへん》に吝《けち》で金《かね》を溜《ため》る奴《やつ》だと云《い》ふ事を聞いて居《ゐ》るが、アヽ云《い》ふ奴《やつ》は屹度《きつと》物《もの》を喰《く》はうとするとボーと火か何《なに》か燃上《もえあが》るに違《ちげ》えねえ、一|番《ばん》見たいもんだな、食物《くひもの》から火《ひ》の燃《もえ》る処《ところ》を、ウム、幸《さいは》ひ壁《かべ》が少し破れてる、斯《か》うやつて火箸《ひばし》で突《つ》ツついて、ブツ、ヤー這出《はひだ》して竹の皮を広《ひろ》げやアがつた、アレ丈《だけ》悉皆《みんな》喰《く》つちまうのか知ら。見て居《ゐ》るとも知らず源八《げんぱち》は餅《もち》を取上《とりあ》げ二ツに割《わつ》て中《なか》の餡《あん》を繰出《くりだ》し、餡《あん》は餡《あん》餅《もち》は餅《もち》と両方《りやうはう》へ積上《つみあ》げまして、突然《とつぜん》懐中《ふところ》へ手《て》を突込《つツこ》み暫《しばら》くムグ/\やつて居《ゐ》たが、ズル/\ツと扱出《こきだ》したは御納戸《おなんど》だか紫《むらさき》だか色気《いろけ》も分《わか》らぬ様《やう》になつた古《ふる》い胴巻《どうまき》やうな物《もの》を取出《とりだ》しクツ/\と扱《こ》くと中《なか》から反古紙《ほごがみ》に包《つ
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