つ》んだ塊《かたまり》が出《で》ました。之《これ》を執《とつ》てウームと力任《ちからまか》せに破《やぶ》るとザラ/\/\と出《で》たのが古金《こきん》で彼此《かれこれ》五六十|両《りやう》もあらうかと思《おも》はれる程《ほど》、金「おゝ金子《かね》だ、大層《たいそう》持《も》つて居《ゐ》やアがるナ、もう死ぬと云《い》ふので己《おれ》が見舞《みめえ》に行《い》つてやつたから、金兵衛《きんべゑ》さんに是《これ》だけ残余《あと》はお長家《ながや》の衆《しゆう》へツて、施与《ほどこし》でもするのか知《し》ら、今《いま》茲《こゝ》で己《おれ》が行《い》くと尚《なほ》沢山《たんと》貰《もら》へる訳《わけ》だが。と見て居《ゐ》ると金《かね》を七八《なゝやツつ》づゝ大福餅《だいふくもち》の中《なか》へ入《い》れ上《うへ》から餡《あん》を詰《つ》め餅《もち》で蓋《ふた》をいたしてギユツと握固《にぎりかた》めては口へ頬張《ほゝば》り目《め》を白《しろ》ツ黒《くろ》にして呑込《のみこ》んで居《ゐ》る。金「ア、彼《あれ》を喰《くひ》やアがる、何《ど》うも酷《ひど》い奴《やつ》だナあれ/\。と見て居《ゐ》る中《うち》に忽《たちま》ち五六十|両《りやう》の金子《かね》を鵜呑《うのみ》にしたから堪《たま》らない、悶掻《もがき》※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《まは》つて苦しみ出し。源「ウーンウーン金兵衛《きんべゑ》さん、金兵衛《きんべゑ》さん。金「あい/\今《いま》行《い》くよ、今《いま》行《い》くよ。源「ウーン/\。金「何《ど》うしたい。源「ハツ/\。金「おゝ/\お湯も何《なに》も飜《こぼ》れて大変《たいへん》だ。源「ド何卒《どうぞ》お湯をもう一杯下さい。金「サお喫《あが》り。源「へい有難《ありがた》う。微温湯《ぬるまゆ》だから其儘《そのまゝ》ゴツクリ飲《の》むと、空《から》ツ腹《ぱら》へ五六十|両《りやう》の金子《かね》と餅《もち》が這入《はいつ》たのでげすからゴロ/\/\と込上《こみあ》げて来《き》た。源「ムツ、ムツ。金「オヽ吐《は》くのか吐《は》くなら少しお待ち、サ此飯櫃《このおはち》の蓋《ふた》ン中《なか》へ悉皆《すつかり》吐《は》いてお了《しま》ひ。源「ハツ/\ド何《ど》うぞモウ一杯お湯を…。金「サお上《あが》り。源「へい有難《ありがた》う。グート息《いき》をも継《つ》かず
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