《なくな》つて後《のち》は音沙汰《おとさた》はありませぬ、もしお逢《あ》ひになつたら、どうか宜《よろ》しく・……」「何《なん》といふ名前です」「お師匠《ししやう》さん、私《わたし》は年を老《と》つて物おぼえが悪くなつて、よく覚《おぼ》えて居《を》りませぬが、何《なん》でも多《た》の字《じ》の付《つ》く名前でしたが、忘れました」「分《わか》りませぬか」「分《わか》りませぬ」どうも村名《ところ》も分《わか》らず、名前も分《わか》らず、殆《ほとん》ど困りましたけれども、細《こま》かに尋《たづ》ねたら知れぬ事もあるまいと、是《これ》から宅《たく》へ帰《かへ》つて、直《すぐ》に旅立《たびだち》の支度《したく》を始めたから、宅《うち》の者は驚《おどろ》いて、何処《どこ》へ行《ゆ》くといふ。少し理由《わけ》があつて旅をすると云《い》ふと、弟子《でし》や何《なに》かが一|緒《しよ》に行《ゆ》きたがるが、弟子《でし》では少し都合《つがふ》の悪いことがある。宅《たく》に酒井伝吉《さかゐでんきち》といふ車を曳《ひ》く男《をとこ》がある、此男《このをとこ》は力が九|人力《にんりき》ある、なぜ九|人力《にんりき
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