い衆《しう》がどれと云《い》つて行《い》つて見ると、どうも先刻《さつき》店《みせ》へ来《き》て、番頭《ばんとう》さんと争《あらそ》ひをして突出《つきだ》された田舎者《ゐなかもの》に似《に》てゐますといふから、どれと云《い》つて番頭《ばんとう》が行《い》つて見ると、成程《なるほど》先刻《さつき》店《みせ》へ来《き》た田舎者《ゐなかもの》の土左衛門《どざゑもん》だから、悪人《あくにん》ながらも宜《よ》い心持《こゝろもち》はしない、身《み》の毛《け》慄立《よだ》つたが、土左衛門《どざゑもん》突出《つきだ》してしまへと云《い》ふので、仕事師《しごとし》が手鍵《てかぎ》を持《も》つて来《き》たり、転子《かるこ》が長棹《ながさを》を持《も》つて来《き》たりして突出《つきだ》すと、また其《そ》の桟橋《さんばし》へ戻《もど》つて来《く》る、幾《いく》ら突放《つツぱな》しても戻《もど》つて来《く》るから、そんなこつてはいけないと云《い》ふので、三|人掛《にんかゝ》つて漸《やうや》く突出《つきだ》したところが、桟橋《さんばし》で車力《しやりき》が二人《ふたり》即死《そくし》してしまひ、仕事師《しごとし》が一人《ひとり》気《き》が違《ちが》つてしまつたと云《い》ふ騒《さわ》ぎ。それから其《そ》れが祟《たゝ》りはしないか/\といふ気病《きや》みで、今《いま》いふ神経病《しんけいびやう》とか何《なん》とか云《い》ふのだらうが、二代目はそれを気病《きや》みにして遂《つひ》に気《き》が違《ちが》つた。それから三代目が嫁《よめ》を貰《もら》つたのは、名前は忘れたが、何《なん》でもお旗本《はたもと》のお嬢様《ぢやうさま》とか何《なん》とかいふことだつた。お旗本《はたもと》のお嬢様《ぢやうさま》が嫁《よめ》に来《く》るやうな身代《しんだい》になつたのだから、たいした身代《しんだい》になつた。すると此《こ》の嫁《よめ》を姉《あね》と番頭《ばんとう》とで虐《いぢ》めたので、嫁《よめ》は辛《つら》くて居《ゐ》られないから、実家《さと》へ帰《かへ》ると、親父《おやぢ》は昔気質《むかしかたぎ》の武士《ぶし》だから、なか/\肯《き》かない、去《さ》られて来《く》るやうな者は手打《てうち》にしてしまふ、仮令《たとひ》どんな事があらうとも、女《をんな》は其《そ》の嫁《か》した家《いへ》を本当《ほんたう》の家《いへ》と
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