《すぐ》に何《ど》う斯《こ》うという訳にも往《ゆ》かず、捨《すて》て置いて失策《しくじり》でも出来るといけねえから、一と先《ま》ず谷中《やなか》の兄《あに》さんの方へ連れて行って、時節を待ったら宜かろう、其の中《うち》にはまた出入をさせる事もあるじゃアねえか、と斯う仰しゃるのだ、うむ、それから、なんだ斯ういう事も云った、何分|宅《うち》の奉公人や何かの口がうるせえから、一時《いちじ》そういう事にするんだが、仮令《たとえ》他人《ひと》が何《なん》といおうと、私の為にはたった一人の娘だから、同じ取るなら娘の気に入った聟を取って、初孫《ういまご》の顔を見たいと云うのが親の情合《じょうあい》じゃアねえか、娘が強《た》って彼《あれ》でなければならないといえば、私には気に入らんでも、娘の好いた聟を取って其の若夫婦に私は死水《しにみず》を取って貰う気だが、鳶頭何うだろう、と仰しゃるのだ、お内儀さんの思召《おぼしめし》では、一時お前《めえ》さんに暇を出して、世間でぐず/\いわねえようにしちまって、それから良い里を拵えて、ずうっと表向きお前《まえ》さんを聟にして、死水を取って貰おうてえお心持があるんだか
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