ら……其の代りどうか兄《あに》さん粂を可愛がってやってお呉んなさい、又粂も宜《い》いか、もう四十を越してる兄さんだ、能《よ》く大事にして上げてくれ、よ、お前|幾歳《いくつ》になる、なに十九歳だ、うむ然《そ》うか、いや鳶頭、誠に何とも云いようがごぜえませぬ、お前《めえ》さんは粂を贔屓にしてお呉んなすって、やれこれ云って下すったのは、私《わっち》からも厚くお礼を申します、実ア今日|此処《こゝ》へ忍び込んで間《ま》が好《よ》かったら、此のどさくさ紛れに、もう一仕事する積《つもり》で来た処が、まア斯《こ》ういう訳になりましたから何卒《どうぞ》私へ縄を掛けて突出してお呉んなせえ……やい番頭、さ、己を縛れ」
番「なに此奴《こいつ》……汝《おのれ》が泥坊か、此のお庭へ何所《どこ》から這入った」
三「何所からだって這入《へい》るが、さ縛れ、其の代り己が喰《くら》い込めば、もう娑婆ア見る事ア出来ねえから、此の番頭|手前《てめえ》も一緒に抱いて行《ゆ》くから然《そ》う思え」
番「そりゃアえらい事《こっ》ちゃな」
是《こ》れから捨て置けませぬから、甲州屋の家内は家《うち》から縄付《なわつき》を出すの
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