私の仕業だ、そればかりでなく、娘を殺す前《めえ》に、段々様子を聞くと、宅《うち》に奉公をして居た粂之助と云う者は、暇《いとま》が出て当時では谷中仲門前の長安寺と云う寺に居るんだと聞いたから、もう一仕事しようと思って粂の処《とこ》へ出かけ、旨く騙《だまか》して金子《かね》を持って逃げておいでなさいと云ったのは、私の入智慧《いれぢえ》、本堂再建の普請金八十両を盗ませたのも皆この三次郎の作略でごぜえます」
玄「ふむー、此奴《こやつ》……えらい奴じゃな」
三「でね、まア然《そ》ういう理由《わけ》なんだから、鳶頭と番頭や何か残らず此所《こゝ》へ呼んでおくんなせえ」
玄「粂、早う呼んで来い」
粂「誰方《どなた》も早く来て下さいましよ」
と呶鳴ったから、何事かと思って鳶頭も番頭も皆揃って来ました、ずらりと大勢ならべて置いて、右の一伍一什《いちぶしじゅう》を三次郎が話した時には、鳶頭も番頭も驚いて暫《しばら》くは口も利けぬくらいでありました。
三「さ、何うぞ私《わっし》に縄を掛けて引く処へ引いてお呉んなせえ、決して粂之助の科《とが》じゃアねえ、私《わっち》が人殺《ひとごろし》をしたんですか
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