を取って抜くより早く喉《のど》へ突立てにかゝった。玄道は胆《きも》を潰して其の手を抑《おさ》え、
 玄「こ、これ待てッ」
 粂「いゝえ、お留め下さるな、申訳が有りませぬから、私《わたくし》は自害をいたして申訳をいたします」
 玄「自害をしたってそれで済むと思うか」
 頻《しき》りに争うておる処へ、ガラリと縁側の障子を開けて這入って来た男を見ると、紋羽《もんぱ》の綿頭巾を鼻被《はなっかむり》にして、結城《ゆうき》の藍微塵《あいみじん》に単衣《ひとえもの》を重ねて着まして、盲縞の腹掛という扮装《こしらえ》、小意気な装《なり》でずっと這入って、
 男「ま、ま、お待ちなせえ、おう詰らねえ事をするない、手前《てめえ》は死なねえでも宜《い》いや」
 粂「ヘエー」
 と顔を見ると今日朝の中《うち》に来た、千駄木の植木屋の九兵衞だから恟《びっく》りして、
 粂「おや、貴方は千駄木の植木屋さんで……」
 九「ウム、植木屋の九兵衞だ、お前《めえ》はまア死なねえでも宜《い》い……え、和尚さん私《わっち》は、千駄木の植木屋の九兵衞と云って、此の粂之助を騙《だまか》しに行った悪党でごぜえます」
 玄「何じゃ……
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