ゃとか、風呂敷とか、手拭とか云うものを盗んで袂《たもと》へ入れて来るじゃ、そこでお父様《とうさま》も呆れてしまい、此奴《こやつ》が跡目相続をすべき奴じゃけれども仕方がないと云うて、十九の時に勘当をされた、丁度三人の同胞《きょうだい》でありながら、私は出家になり、弟は泥坊根性があり、手前は又|主家《しゅうか》の娘と不義をして暇《いとま》を出されるのみならず、兄の身に取っては大切の金子《かね》まで取るという奴じゃから、何う人さんから云われても一言の申訳はあるまい、憎い奴じゃ、兄の自滅をするという事を悉《くわ》しく知って居ながら、斯《こ》ういう不都合をするとは云おう様ない人非人《にんぴにん》め」
と腹立紛れに粂之助の領上《えりがみ》を取って引倒して実の弟を思うあまりの強意見《こわいけん》、涙道《るいどう》に泪《なみだ》を浮べ、身を震わせながら粂之助を畳へこすり附ける。粂之助は身の言分《いいわけ》が立ちませぬから、
粂「申訳を致します……もも申訳を……何卒《どうぞ》お放しなすって下さいまし」
玄「さ、何う言分をする」
粂「へい申訳は此の通りでござります」
と自分の差して来た小短い脇差
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