はなくして八十両の包み金《がね》、表書《うえ》には「本堂|再建《さいこん》普請金、世話人|萬屋源兵衞《よろずやげんべえ》預《あずか》る」と書いてあったから、誰より驚いたのは玄道和尚で、ぶる/\震えながら、
 玄「ま、これ粂之助、ま、此の金子《かね》は何うした」
 粂「はい/\申し訳がございませぬ」
 玄「これはまア……番頭さん、鳶頭、又御当家の御家内様まで、粂之助がお嬢様を殺して金子《きんす》を取ったろうという御疑念をお掛けなさるは御道理《ごもっとも》の次第でござる、なれども、此の儀に就《つ》いては私《わたくし》より少々粂之助へ申聞《もうしき》けたい事がござれど、少しく他聞を憚《はゞか》りまする故、何所《どこ》か離れたお居間はござりますまいか、余り人様のお出《いで》のない所を拝借いたしたいもので」
 内儀「はい/\、あの鳶頭、奥の六畳へ連れて行ったらよかろう、離れてゝ彼所《あすこ》が一番|静《しずか》でもあり人が行かないから」
 鳶「宜《い》いかね、大丈夫かえ和尚|様《さん》」
 玄「いえ、決して逃しは致しませぬから、御安心なすって……さア来い」
 と粂之助の手を執《と》って引立てる。
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