待って居ました、所へ千駄木の植木屋九兵衞というものが参り、
九「昨晩お嬢|様《さん》がお出《いで》になりましたから、私《わたくし》が何処《どこ》へでもお逃し申すようにするゆえ、金子《かね》の才覚をして来い」
と云うので、態《わざ》とお梅の巾着の中に三両ばかり入れた儘置いて帰った。是が九兵衞の企《たく》みのある処でござります。此方《こちら》はまだ年が若いから、何の気も附かず、是は全くお梅から届けたものと心得て、前後《あとさき》の思慮も浅く、其の巾着の内へ、本堂|再建《さいこん》の普請金八十両というものを盗み出して押込み、これを懐へ入れて置いたのが、立上る機勢《はずみ》にドサリと落ちたから番頭はこゝぞと思って右の巾着を主婦《あるじ》の前へ突付けたり、鳶頭《かしら》にも見せたりして居丈高《いたけだか》になり、
番「さ、粂之助、此の巾着が出る上は貴様がお嬢|様《さん》を殺したに相違あるまい」
と責めつけたから、座中の人々互に顔と顔を見合せ、鳶頭も甲州屋の家内も実に驚いて、「よもや粂之助がお梅を殺して五十両という金子《きんす》を取りはすまい」とは思うが、金子《かね》が出た。見ると五十両で
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