《うたぐ》ってやアがるか」
番「まアあんたは、粂之助を贔屓にしておるで、そう思いなはるのじゃ、これ粂之助ちょっと此処《これ》へ来い、汝《おのれ》はまだ年は十九で、虫も殺さぬような顔附をして居るが太い奴《やッ》ちゃ、体《てい》よくお嬢様を誘い出して、不忍弁天の池の縁《ふち》の淋しい処でお嬢様を殺して、金を取って、死骸を池の中へ投《ほう》り込んだに違いあるまい、さ、どうだ、真直《まっすぐ》に云うてしまえ」
斯《こ》う云われるともと人が善《よ》いから、余《あんま》り腹が立って口が利かれない、いきなり立って番頭の胸倉へ武者振りつこうとする途端に、ポンと堕《お》ちたのは九兵衞が置忘れて帰った女夫巾著《みょうとぎんちゃく》、番頭は早くも之《これ》を拾い取って高く差上げ、
番「こ、是じゃ、お内儀《いえ》はん、是はお嬢|様《さん》が不断持って居やはりました巾着でがしょう」
云いながら振ると、中からドサリと落ちた塊《かたまり》は五十両ではなくて八十両。
三
えゝ引続いてお聴きに入れまする、お梅粂之助は互に若い身そらで心得違をいたしたるより、其の身の大難を醸《かも》しました。
前へ
次へ
全56ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング