そ》う云う御疑念が懸っても仕方がない、仕方がないが、然う云う場合になると、粂之助は頓《とん》と口の利けぬ奴じゃで、私《わし》も一緒に参りましょう」
鳶「そりゃア有難《ありがて》え、なるたけ大勢の方がようがす、じゃア直《すぐ》に行っておくんなせえ」
これから提灯を点《つ》けて寺を出かけ、三人揃って甲州屋の裏口から這入って来ました。
内儀「さア、何卒《どうぞ》此方《こちら》へ、/\」
鳶「え、お内儀様《かみさん》、谷中の長安寺の和尚様も入らっしゃいましたよ」
内儀「おや/\それは何うもまア何うぞ此方へ」
玄「はい、御免を……唯今鳶頭から不慮の事を承りまして、何とも御愁傷の段察し入ります」
鳶「まア、其様《そん》な長ったらしい悔《くやみ》は後《あと》にしておくんなせえ、さ、粂どん此方《こっち》へ這入んなよ」
粂「ヘエ……えゝ、お内儀様《かみさん》お嬢様が飛んだ事にお成りあそばしまして、嘸《さぞ》御愁傷でござりましょう」
是迄は涙一滴|澪《こぼ》さぬでいたが、今しも粂之助の顔を見ると、堪《こら》えかねて袖を顔へ押宛《おしあて》て、わっとばかりにそれへ泣倒れました。
内儀「粂
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