「何ういう理由の何のって、大変な騒ぎなんで、まア和尚|様《さん》お聴《きゝ》になって下せえまし、お嬢様は粂どんに逢いてえ一心から、莫大《ばくでえ》の金子《かね》を持《もっ》て家出をしたから、大方泥坊に躡《つ》けられて途中で遣《や》るの遣らねえのといったもんだから、殺されたに違《ちげ》えねえんで、それを店の番頭野郎がこう吐《ぬか》すんだ、何《な》んでも粂どんがお嬢様を誘い出して、途中で殺して金子を取ったに違えねえ、鳶頭も粂どんと共謀《ぐる》になって、其の金を二十五両ぐらい取ったろう、こう吐すんだ、私《わっし》は腹が立って堪らねえから、余程《よっぽど》殴りつけてやろうとは思ったけれども、お前《めえ》さん何うもね、お内儀様《かみさん》が御愁傷の中だから、そんな乱暴狼藉[#「狼藉」は底本では「狼籍」と誤記]の真似をしちゃア済まねえと思って、耐《こら》えていたが、粂どんが何《なん》にも知らずに斯《こ》うやっているから本当に宜かった、何卒《どうぞ》直《すぐ》に行っておくんなせえ」
 玄「いや、それは重々|御道理《ごもっとも》な訳じゃ、此方《こちら》にも不行跡《ふしだら》がある事《こっ》ちゃから然《
前へ 次へ
全56ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング