御免なせえ」
粂「はい……おや/\鳶頭」
鳶「や、粂どん……まア宜《よ》かった、はあ…お前《めえ》に怪しい事があれば何所《どっ》かへ逃げちまうんだが、ちゃんと此処《こゝ》に居てくれたんでまア宜かった、あゝ有難《ありがて》え」
粂「あの兄《あに》さん、何だか鳥越の鳶頭がおいでなさいましたよ」
玄「いやア、鳶頭、まあ何卒《どうぞ》此方《こちら》へ誠に何《ど》うも御無沙汰をして済まぬ、ちょっとお礼かた/″\お訪ね申さんければならぬのじゃが、何分にも寺用《じよう》に取紛れて存じながら大きに御無沙汰を……」
鳶「そう長ったらしく云ってられちゃア困る、大騒動が出来たんだ、まア御挨拶は後《あと》にしておくんなせえ、おゝ粂どん、お嬢様が昨夜《ゆうべ》家出をした事を知ってるかい」
粂「いゝえ…………」
鳶「いゝえって震えたぜ、え、おい、お嬢様が殺されちまったんだよ」
粂「えっ、お嬢様が……」
鳶「死骸が弁天の池から今朝上がって、御検視を願うの何《なん》のって大騒ぎをしたんだ」
粂「へえー……じゃア千駄木の植木屋の九兵衞さんというのは何です、全体まア何ういう理由《わけ》なんです」
鳶
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