お》らば、何うしたって嬢様が逃げ出す気遣《きづけえ》はねえだ、逃げなけりゃア殺されることもねえだ、それを知って居ながら黙ってゝ、嬢様が逃出してから殺されゝば、汝が殺したも同じ事《こん》だぞ、まだぐず/\何か云やアがると打《ぶ》っ殺して己《おれ》も死んじまうだ」
 内儀「コレ/\清助静かにしないか、番頭|様《さん》に向ってそんな事をいっては済まないじゃないか、鳶頭、お前も嘸《さぞ》腹が立つだろうが、何卒《どうぞ》我慢をしておくれ、悉皆《みんな》私が呑込んでいるから、私は決して粂之助の仕業《しわざ》とは思わないけれども、大方粂之助も此の事を知らずに谷中に居るに違いない、お前が行って斯《こ》う/\と知らせたら、粂之助も定めて恟《びっく》りするだろうと思うから、お願いだが、お前ちょいと此の事を粂之助へ知らせてお呉れでないか」
 鳶「え、往《い》きますとも、半分取ったろうなんて、飛んでもねえ濡衣《ぬれぎぬ》を着せられたんですもの、直《すぐ》に行って来ます、少し提灯《ちょうちん》をお貸しなすって」
 ずうっと腹立紛《はらたちまぎれ》に飛びだして谷中の長安寺へやって来ました。
 鳶「え、御免なせえ、
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