《あまた》召使い、何暗からず立派に暮して居りました。すると子飼《こがい》から居《お》る粂之助《くめのすけ》というもの、今では立派な手代となり、誠に優しい性質《うまれつき》で、其の上|美男《びなん》でござります。嬢さんも最早|妙齢《としごろ》ゆえ、良《い》い聟《むこ》があったらば取りたいものと、お母《っか》さんは大事がって少しも側を離さないようにして置きましたが、どうも仕方がないもので、ある晩のことお母さんが不図目を覚まして見ると娘が居ない。
「はてな、何処《どこ》へ行ったか知らん、手水《ちょうず》に行ったならもう帰りそうなものだが」
と思ったが何時《いつ》まで経っても戻って来ない。
母「はてな嬢ももう年頃、外に何も苦労になる事はないが、店の手代の粂之助は子飼からの馴染ゆえ大層仲が好《い》いようだが、事によったら深い贔屓《ひいき》にでもしていはせぬか知ら」
とお母さんが始めて気が付いたけれども、気の付きようが遅かったから、もう間に合いませぬ。これが馬鹿のお母さんなら直《すぐ》に起き上って紙燭《ししょく》でも点《とも》し、から/\方々を開け散かして、「此の娘《こ》は何うしたんだよ」
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