なんて呶鳴って騒ぐんだが、沈着《おちつ》いた方だから其様《そん》な蓮葉《はすは》な真似はしない、いきなり長羅宇《ながらう》の煙管《きせる》で灰吹《はいふき》をポン/\と叩いた。深夜のことゆえピーンと響いたから、お嬢さんは恟《びっく》りいたし、そっと抜足《ぬきあし》をして便所へ参り、ギーイ、バタンと便所から出たような音ばかりさせて、ポチャ/\/\と水をかけて手を洗い、何喰わぬ顔をして其の晩は寝てしまった。翌朝《よくあさ》になると、お母さんが直に鳶頭《かしら》を呼びにやって、右の話をいたし、一時《いちじ》粂之助の暇《ひま》を取って貰いたいと云う。鳶頭も承知をして立帰った後で、
主婦「粂や、粂」
粂「へい」
主婦「あのお前のう、ちょいと鳥越《とりこえ》の鳶頭の処まで行ってくんな、用は行《ゆ》きさえすれば解る………私がそういったから来ましたといえば解るんだよ」
粂「へい畏《かしこま》りました」
何だか理由《わけ》は解らぬが、粂之助は直に抱《かゝえ》の鳶頭の処へやって来まして、
粂「へい今日《こんち》は」
鳶「いや、お上《あが》んなさい、宜《い》いからまアお上んなさい、ずうっと二階
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