う考えるのでおす」
 鳶「おう、おう番頭さん、詰らねえ事を云っちゃアいけねえぜ、お前《めえ》は全体《ぜんてえ》粂どんを憎むから然《そ》う思うんだが、まアよく考えて見ねえ、粂どんが人殺をするような人だか何だか、ソヽ其様《そん》な解らねえ事をいったって仕様がねえじゃアねえか」
 番「イヤ真実《まったく》の事だ、証拠があるぜ」
 鳶「証《しょう》、な何が証拠だ」
 番「定吉い、ちょっと此処《こゝ》へ来い、えゝめろ/\泣くな」
 定「何です番頭《ばんつ》さん、泣くなたってお嬢様が死んで哀しくって堪《たま》らないから、泣くんです」
 番「えゝい、汝《おのれ》がお嬢様を殺したもおんなじ事《こっ》た」
 定「あゝいう無理な事ばかりいうんだもの、どういう理由《わけ》で」
 番「汝《おのれ》は一昨日《おととい》の夜《よ》この店で帯を締め直す時に落した手紙は、お嬢|様《さん》に頼まれて粂之助の処へ届けようとしたのじゃないか」
 定「あら………仕様がないな、彼所《あすこ》に持っているのだもの、道理で無いと思った」
 番「此様《こん》なものをお嬢様から頼まれるのが悪いのだ」
 定「頼まれるのが悪いたって………
前へ 次へ
全56ページ中33ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング