仕様がないナ………その頼まれたのはなんでございます………仕様がないな………あの……それはお嬢|様《さん》が、定や、ちょいとお出でてえから、はいてってお居間へ行ったんです、然《そ》うするとお前|何所《どこ》へ行《ゆ》くんだと仰しゃるから、私《わたくし》は谷中の方へ参るんですといったら、そんならお前これを粂どんに届けてお呉れって、お手紙を私の懐へ入れたから持って行ったんです」
 番「ウム、持って行って何うした」
 定「何うしたって……しようがないな」
 番「汝《おのれ》は度々《たび/\》粂之助の処《とこ》へ寄るから悪いのじゃ」
 定「ナニ寄る気でもないんですが、近いから、あのお寺の前を通ると曲角《まがりかど》のお寺だもんですから、よく門の所《とこ》なんぞを箒《は》いてゝ、久振《ひさしぶり》だ、お寄りなてえから、ヘイてんで旧《もと》は朋輩《ほうばい》だから寄りますね」
 番「道理で毎《いつ》も使《つかい》が長いのや」
 定「ナニ別に長い訳もないんですが、今お葬式《とむらい》が来てお饅頭を貰った、それをお前に上げるから、お待ちてえから待ってたんです」
 番「えゝい、喰《くら》い物の事ばかり云う
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