どうも大きに御苦労/\」
鳶「何だなア、定さん、男の癖におい/\泣くのは止しねえ、お内儀様《かみさん》は女でこそあれ、あゝいう御気象だから、涙一滴|澪《こぼ》さぬで我慢をしていらっしゃるのだ、それだのにお前が早桶の側へ行って、おい/\泣くもんだから不可《いけね》えよ」
定「泣くなってそれは無理でございます、何だか此の早桶の側へ来ると哀しくなるんですもの、お嬢|様《さん》は別段に可愛がって呉れましたから、私は哀しくなるのです」
鳶「まア泣いちゃア不可ねえ、えゝお内儀様唯今」
内儀「あい、鳶頭大きに色々お骨折《ほねおり》で、何も彼《か》もお前のお蔭で行届《ゆきとゞ》きました」
鳶「どう致しまして、就《つ》きまして麻布|様《さん》の方へお嬢|様《さん》が家出をなすった事を知らせにやりまして、金太《きんた》がようやく先方《むこう》へ着いたくらいの時に、又|斯《こ》ういう変事が出来ましたから、追《おっ》かけて人を出し、これ/\でおなくなりになったてえ事をお知らせ申しましたら、大層にお驚きなすったそうでげす」
内儀「そうであったろう、もう麻布のが一番|彼《あれ》を可愛がってくれたから、
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