帰って参り、それより入替り立代り客が来るので、何分出る事が出来ませぬ。
お話は二つに分れまして鳥越桟町の甲州屋方では大騒ぎ、昨夜《ゆうべ》娘のお梅が家出をいたした切りかいくれ行方が解りませぬから、家内中《うちじゅう》の心配大方ならず、お鬮《みくじ》を取るやら、卜筮《うらない》に占《み》てもらうやら、大変な騒ぎをして居る処へ、不忍弁天の池に、十六七の娘の死体が打込んであるという噂を聞込んで来て、知らせた者があるから、母親《おふくろ》は仰天して取るものも取《とり》あえず来て見ると、お梅に相違ないから早々人を以《もっ》て御検視を願い、段々死体を調べて見ると、縊《くび》り殺して池の中へ投込んだものらしく、殊《こと》には持出した五十両の金子《きんす》が懐にないから、おおかた物取《ものどり》であろうと、事が極って検視済の上死骸を引取り、漸《ようや》く日暮方に死骸を棺桶へ収めることになった。処へ鳶頭《かしら》が来まして、
鳶「ヘエ唯今、あの何《なん》でげす、八丁堀さんと、それから一番遠いのが麻布《あざぶ》の御親類でげすが、それ/″\皆《みんな》子分を出してお知らせ申しました」
番頭「あ、それは
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