あい》の者だから、これへ手紙を附けて上げるから、当人に逢って、能《よ》く相談をして世帯《しょたい》を持たせて貰いなさるが宜《い》い、併《しか》し彼方《あっち》へ行《ゆ》くだけの路銀と世帯を持つだけの用意はありやすか」
 粂「金と云っては別にございませぬが、兄が此間《こないだ》私《わたくし》にしまって置けと預けた金がございます、それは本堂|再建《さいこん》のため、世話人|衆《しゅ》のお骨折で、八十両程集りましたのでございます」
 九「イヤ八十両ありゃア結構だ、三十両一ト資本《もとで》と云うが、何様《どん》な事をしても五十両なければ十分てえ訳には往《ゆ》かねえが、其の上に尚《なお》三十両も余計な資金《もの》があれば、立派にそれで取附けますが、其の金をお前|様《さん》取れますか」
 粂「へえ、用箪笥《ようだんす》の抽斗《ひきだし》に這入っていますから直《すぐ》に取れます、そうして後《のち》にお宅へ出ますが何方《どちら》です」
 九「あの千駄木へお出でなさると右側に下駄屋があります、それへ附いて広い横町を右へ曲ると棚村《たなむら》というお坊主の別荘がある、其のうしろへ往って植木屋の九兵衞といえ
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