う云うから私《わっち》も困って、兎も角粂さんに逢ってからの事に仕ましょうといって、今日《けさ》わざ/\お前《めえ》さんの所《とこ》へ訪ねて来たんですが、お前さんも矢っ張お嬢様と何処までも添い遂げるという御了簡があるんですか、ないんですか、一応貴方の胸を聴きに来たんでげす」
 粂「それは何うも怪《け》しからぬ事です、あの時お内儀様《かみさん》が色々と御真実に仰しゃって下すったから、私《わたくし》は斯《こ》うやって何処へも行《ゆ》かずに辛抱をして居ますのに、お嬢|様《さん》に聟を取れと仰しゃるような、そんな御了簡違いのお方なら、私は何処までもお嬢様を連れて逃げまして、何様《どん》な真似をしたって屹度添い遂げます」
 九「それで私《わっち》も安心をしたが、お前さん何処《どっ》か知ってる所がありますか」
 粂「私《わたくし》は別に懇意な家《うち》もありませぬ」
 九「そりゃア困るね、何所《どこ》かありませぬか」
 粂「ヘエ、何も」
 九「何も無いたって困るねえ、じゃまア斯《こ》うしよう、下総《しもふさ》の都賀崎《つがざき》と云う所に金藏《きんぞう》という者がある、私《わっち》とは少し親類|合《
前へ 次へ
全56ページ中25ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング