《こ》ういう理由なんでげす、あのお嬢さんが二歳《ふたつ》の時に、私《わっし》の母親《おふくろ》がお乳を上げたんで、まア外《ほか》に誰も相談相手が無いからって、訪ねておいでなすったから、母親もびっくりして、まアお嬢さん、今時分何ういう理由《わけ》で入らしったてえと、犬に吠えられたり何かして、命からがら漸《ようよ》うの事でお前の処《とこ》へ来た理由は、誠に乳母《ばあ》や面目ないが、長らく宅《うち》に勤めて居た手代の粂之助というものと、人知れず懇《ねんごろ》を通じて夫婦約束をした、処がお母《っか》さんが世間の口がうるさいから一時《いちじ》斯《こ》うはするものゝ、後《のち》には必ず添わせてやると仰しゃって、粂之助に暇《いとま》を出して了《しま》った後《あと》で、外《ほか》から聟を取れと仰しゃる、それじゃアどうも粂之助に義理が済まないから、私は斯うやって駈出したんだと仰しゃるんです、そうすると私《わっし》の母親は胆《きも》をつぶしてね、素《す》ッ堅気《かたぎ》だから、なか/\合点《がってん》しねえ、それはお嬢|様《さん》飛んでもない事で、お店の奉公人や何かと私通《いたずら》をするようなお嬢様なら
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