御用でもあるんでげすか」
梅「はい、あの、粂之助は私《わたくし》どもに長らく勤めて居ったものですが、少し理由《わけ》がありまして先達《せんだって》暇《いとま》を出しましたが、それきり何の沙汰もございませんで、余《あんま》り案じられますから出て参りましたのでございます」
男「ヘエー左様でございますか、じゃアまア私《わっし》と一緒においでなさい、どうせ彼方《あっち》へ帰るんですからお連れ申しましょう、其の代りお嬢様に少しお願《ねげ》えがあるんでげす、毎度私は和尚様から殺生をしてはならねえぞとやかましく云われるんでげすが、嗜《すき》な道は止《や》められず、毎晩|斯《こ》うやって、どんどん[#「どんどん」に欄外に校注、「三橋の側にあった不忍池の水の落口」]へ来ては鰻の穴釣《あなづり》をやってるんでげすが、どうぞお嬢さま私が此処《こゝ》で釣をした事は和尚様に黙ってゝおくんなさい」
梅「御不都合の事なら決して申しは致しませぬ」
男「おい老爺《じい》さん」
爺「へい」
男「あのね、此のお嬢様は己の方へ来るお方だから、己が御案内をして行《ゆ》くんだ、さ、喰った代《でえ》を此処《こゝ》へ置く
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